レスタのギター日記

ギター初心者が挫折しない1曲の選び方

ギターを手に入れたので、動画を見ながら好きな曲を練習し始めた。

——1週間後、その曲はもう聴いていない。

「やっぱり自分には無理だった」。そう思いかけているなら、少し待ってください。やめた原因は根気ではなく、選んだ曲かもしれません。

最初の1曲は、上達の速さも、続くかどうかも左右します。それなのに、選び方を教えてくれる人はほとんどいません。

最初の1曲は「好きな曲」ではなく、「今の自分に手が届く曲」を選びます。

難しすぎる曲は、やる気をなくす

初心者の相談を受けるたびに、いちばんもったいないと感じるのがここです。

弾けるようになりたい気持ちは十分にある。毎日触る覚悟もある。それなのに、選んだ曲が難しすぎて2週間で心が折れる。やる気がある人ほど、高すぎる山を選びます。

難しすぎる曲は挫折を招き、簡単すぎる曲は退屈を招きます。ちょうどよいのは、「頑張れば弾けそう」と感じるあたり。ここがいちばん伸びます。

僕自身も、最初に選んだのは当時いちばん好きだったバンドの曲でした。結果は散々です。速すぎて指が追いつかず、鳴らない音ばかりが耳につき、3日でケースにしまいました。好きだからこそ、下手な自分に耐えられなかったのです。

最初の1曲で失敗する3つの原因

原因①:いちばん好きな曲を選んでしまう

自然な発想です。でも、憧れの曲には落とし穴が2つあります。

ひとつは、単純に難易度が高いこと。人の心に残る曲は、たいてい作り込まれています。もうひとつは、思い入れが強いぶん、自分の下手さが際立って聞こえること。頭の中では完成形が鳴っているので、そことの差ばかりが気になります。

思い入れのない曲なら「まあ最初はこんなものか」と流せます。この差は想像以上に大きいものです。

さらに厄介なのは、その曲が「弾けなかった曲」として記憶に残ることです。数か月後に実力がついても、無意識に避けるようになります。大切な曲ほど、弾けるようになってから再会したほうが幸せです。

大好きな曲は、いちばん心が折れやすい曲でもあります。

原因②:曲の速さを見ていない

問題は曲の速さです。

速い曲を無理に弾こうとすると、指が間に合わず、力が入り、間違いが増えます。そして「自分は不器用だ」と結論づけてしまう。

速さは技術ではなく条件です。ゆっくりな曲なら、同じ実力でも弾けます。

原因③:はじめから1曲まるごと弾こうとする

3分の曲を、頭から最後まで通そうとする人は多いです。

料理を習い始めた人が、いきなりフルコースは作りません。まずは卵焼き1品です。曲も同じで、最初は盛り上がるところの10秒だけで構いません。

10秒弾けたら、それは「弾けた」です。通せないことは失敗ではありません。むしろ、10秒を完璧にできる人のほうが、3分を雑に流す人より確実に伸びます。

この10秒には、思わぬ効果もあります。人に聞かせられるのです。家族に「ちょっと聞いて」と言える10秒があるかどうかで、続き方が変わります。3分の未完成より、10秒の完成のほうが人を前に進めます。

通し演奏は目標であって、出発点ではありません。

選ぶときの3つの条件

僕が曲を選ぶときに見ている条件は3つです。

条件①:押さえ方(和音)の種類が4つ以内

曲は、いくつかの押さえ方の組み合わせでできています。種類が少ないほど、覚える量が減ります。

検索窓に「曲名 コード」と入れると、指をどこに置くかの図が並んだページが出てきます。そこに4種類までしか出てこない曲を選んでください。3種類だけで最後まで弾ける曲もたくさんあります。

数え方のコツをひとつ。図の下に並ぶ記号(CやGといったアルファベット)が押さえ方の名前です。同じ記号は何度出てきても1種類と数えます。数えるだけなので1分で終わります。

5種類以上あったら、その曲は今回見送る。 これだけで、最初のつまずきの多くは防げます。

条件②:曲がゆっくりであること

判断は簡単です。その曲に合わせてゆっくり手拍子ができるか。慌ただしくなるなら、今は避けます。

バラード寄りの曲は押さえ替えに余裕があるので、初心者向きです。たとえばスピッツの「空も飛べるはず」は、基本的な押さえ方が中心で、落ち着いて指を移せます。

どうしても速い曲を弾きたいなら、動画の再生速度を落とす手もあります。ただしそれは対処法です。最初の1曲は、はじめからゆっくりな曲を選ぶほうが楽です。

条件③:同じところの繰り返しが多いこと

見落とされがちですが、これがよく効きます。

同じ流れが何度も出てくる曲は、覚える量が数分の一で済みます。「Stand By Me」のように同じ並びを繰り返す曲は、初心者にとって理想的な教材です。

繰り返しの多い曲を選ぶのは、手抜きではなく戦略です。

条件に合う曲の探し方

3つの条件を満たす曲を、自力で探すのは大変です。近道を紹介します。

「3コード 曲 初心者」で検索する。 押さえ方が3種類だけで弾ける曲を、まとめて紹介しているページがいくつも見つかります。音楽教室が作っているものが多く、難易度の判断も信頼できます。

そこから、自分が知っている曲を選んでください。知らない曲は、どこを目指せばいいのかがわかりません。鼻歌で歌える程度に知っていれば十分です。

具体名を挙げるなら、スピッツの「空も飛べるはず」、そして「Stand By Me」。どちらも押さえ方が少なく、ゆっくりで、繰り返しが多い。初心者の1曲目として名前が挙がり続けているのには理由があります。

迷ったら、定番と呼ばれている曲を選んでください。 定番になるのは、多くの初心者が実際に弾けたからです。

1曲目で気をつけたいこと

条件に合う曲が見つかったら、あとは進め方です。

まず、その曲を1か月は変えないでください。 うまくいかないと別の曲に移りたくなりますが、変えるたびに覚え直しになり、振り出しに戻ります。

最初の1か月は、完成度を目標にしないこと。難しい曲を完璧に弾くより、毎日15分でもギターに触ることのほうが重要です。音を合わせる作業と、いくつかの押さえ方が習慣になれば十分です。

以前、40代でギターを始めた知人に、好きな曲をいったん置いて、ゆっくりで繰り返しの多い曲に変えるよう勧めました。3週間後、その人は「初めて曲っぽく聞こえた」と笑っていました。同じ人、同じ練習時間でも、曲を変えただけで結果が変わったのです。

今日からできる3つのアクション

1. 候補の曲を「曲名 コード」で検索し、押さえ方の種類を数える。5つ以上なら見送ります。
2. その曲に合わせて手拍子する。慌ただしければ、もっとゆっくりな曲を探します。
3. 弾く範囲を10秒だけに決める。曲の頭でも、盛り上がるところでも構いません。

最初の1曲は、あなたの実力を測る試験ではありません。次の1曲へ連れて行ってくれれば十分です。

そしていつか、諦めた憧れの曲に戻ってきてください。そのころには、なぜ弾けなかったのかが自分でわかるはずです。

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