レスタのギター日記

ギター弾き語り|歌いながら弾けない人へ

押さえ方はひととおり覚えた。歌もサビまで歌える。それなのに、同時にやろうとした瞬間、両方とも崩れる。

歌に気を取られると手が止まる。手に集中すると声が出ない。何度やっても同じところで壊れる。

「自分は不器用なんだ」と思いかけているなら、その結論は早すぎます。

弾き語りは、2つを同時にやる技術ではありません。片方を、考えなくてもできる状態にする作業です。

同時にできないのは、当たり前

弾き語りをしているとき、体は驚くほど多くのことを同時に処理しています。

左手で押さえ方をつくり、右手で一定のリズムを刻み、目で歌詞と押さえ方を追い、口で歌う。この4つが同時に走っています。 初めての人が一度にこなせるほうが不思議です。

だから、正しい順番はこうなります。まずギターを、考えずに弾ける状態まで持っていく。歌を乗せるのはそのあと。

僕自身も、最初はここを完全に間違えていました。押さえ方を覚えたその日に歌おうとして、当然のように失敗し、「弾き語りは才能がある人のものだ」と思い込んでいました。実際は、順番を守っていなかっただけです。

同時にやろうとして失敗しているうちは、何回繰り返しても同時にはできません。

歌と演奏が合わない3つの原因

原因①:ギターがまだ「考えながら」の段階

これがいちばん多い原因です。

押さえ方を見て、指の場所を思い出して、置く。この「思い出す」が入っているうちは、歌う余裕はありません。頭がひとつのことしか処理できないからです。

目安ははっきりしています。押さえ方の名前を見た瞬間、考えずに指が動くか。 ここに一瞬でも迷いがあるなら、まだ歌を乗せる段階ではありません。

判断に迷ったら、その曲を目をつぶって弾いてみてください。手が勝手に動くなら準備できています。止まるなら、まだ頭が指示を出している状態です。頭が指示を出しているうちは、その頭で歌うことはできません。

弾きながら考えている間は、歌う場所が空いていません。

原因②:歌詞をまだ覚えていない

見落とされがちですが、これも大きい原因です。

歌詞を画面で追いながら弾くと、目は歌詞と手の両方を行き来します。その瞬間、リズムが乱れます。

歌詞は、ほとんど見なくても歌える程度に覚えておく。 これだけで演奏はぐっと楽になります。カラオケで歌える曲なら、この条件はすでに満たしているはずです。

原因③:最初から本気で歌っている

まじめな人ほど、いきなり全力で歌います。声を張った瞬間、体に力が入り、手の動きが乱れます。

歌は、あとから足すものです。演奏の上に歌を乗せていくという感覚を持ってください。最初は口ずさむ程度で構いません。

大きな声で歌えるようになるのは、手が安定してからです。

弾き語りができるようになる4つの手順

順番を守れば、必ずたどり着きます。飛ばさないことが唯一のコツです。

手順①:ギターだけを、考えずに弾けるまで

まず歌は忘れて、演奏だけを繰り返します。目標は2つ。

  • 押さえ方の名前を見たら、考えずに指が動く
  • 右手が、意識しなくても一定のリズムで動き続ける

とくに右手が重要です。右手は、弾き語り中いちばん放置される場所になります。テレビを見ながらでも同じリズムを刻み続けられるくらいになれば、合格です。

確かめ方は簡単です。右手を動かしながら、誰かと簡単な会話ができるか。 ひとりなら、今日の予定を声に出してみてください。しゃべった瞬間に手が止まるなら、右手はまだ自動になっていません。歌はしゃべるより難しいので、この段階で歌を乗せてもうまくいきません。

手順②:歌詞を覚える

演奏ができるようになったら、次は歌詞です。ギターを置いて、歌だけを覚えてください。

移動中や家事のあいだに聴くだけでも構いません。目を閉じて最後まで歌えたら、準備完了です。

手順③:右手の回数を極端に減らす

ここが最大の山場であり、いちばん効くコツです。

いきなり普段どおりに弾こうとせず、右手を鳴らす回数を思いきり減らします。 たとえば、押さえ方が変わるところで1回だけ鳴らす。歌の1行に対して1回だけ。それくらい減らして構いません。

音は寂しくなります。でも、それでいいのです。手が暇になったぶん、歌に意識を向けられます。歌が安定してきたら、鳴らす回数を少しずつ戻していきます。

僕がこの方法を知ったとき、正直「こんな簡単にしていいのか」と思いました。ところが、1行1回まで減らした状態で歌い通せた瞬間、初めて「弾き語りをしている」感覚になったのです。その後、回数を戻すのは驚くほど簡単でした。難しかったのは同時にやることではなく、同時にやる入り口を見つけることでした。

手を減らして歌を入れる。これが、同時にやるための唯一の道です。

手順④:小さい声から、本気の声へ

最後は歌の強さです。最初は口ずさむ程度、次に軽く声を出して、最後に本気で歌う。この順番で上げていきます。

いきなり本気の声を出すと、手が止まります。声を強くするのは、いちばん最後でいいのです。

弾き語りに向く曲、向かない曲

順番を守っても、曲が合っていないと苦戦します。最初に選ぶなら、次の条件を満たす曲がおすすめです。

  • 押さえ方の種類が少ない(4種類以内)
  • テンポがゆっくり
  • 歌詞をすでに覚えている

とくに3つ目が効きます。歌を覚え直す手間がないぶん、演奏だけに集中できるからです。カラオケでよく歌う曲を思い浮かべてください。その中に、押さえ方の少ない曲があれば、それが最短ルートです。

逆に避けたいのは、歌が細かく動く曲です。歌のリズムが複雑だと、手のリズムと噛み合わせるのが一気に難しくなります。「ゆったり歌える曲」を選ぶだけで、難易度は半分になります。

どこで弾いて、どこで歌うかを目で確かめる

それでも合わない箇所が残ることがあります。たいていは、歌のリズムと手のタイミングの関係が曖昧なままになっている場所です。

そんなときは、紙に書き出してみてください。 きれいな楽譜である必要はありません。歌詞を書いて、その上に「ここで鳴らす」と印をつけるだけで十分です。

耳だけで覚えようとすると、あいまいなまま繰り返してしまいます。目で見て確認すると、ずれている場所が一発でわかります。

わからないまま100回繰り返すより、1回書き出したほうが早く直ります。

今日からできる3つのアクション

1. ギターを持たずに、その曲を1回歌う。歌詞を見ずに歌えるか確かめてください。詰まるなら、まず歌詞からです。
2. 歌を止めて、右手だけを1分間動かし続ける。リズムが崩れるなら、演奏がまだひとりで走れていません。
3. 1行につき1回だけ鳴らして、歌ってみる。物足りないくらいで構いません。今日はそれで十分です。

弾き語りは、器用さの問題ではありません。順番の問題です。

歌と演奏がぶつかっているなら、それは失敗ではなく、順番を戻す合図です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました