最近、自分のギターの音が、買ったころより冴えない気がする。
でも「気のせいだろう」「自分の弾き方が下手なだけだ」と思って、そのまま弾き続けていませんか。
その音のくすみ、腕のせいではありません。弦が寿命を迎えているだけかもしれません。
多くの初心者は、弦を「切れたら替えるもの」だと思っています。実際は、切れるずっと前に寿命が来ます。
弦は消耗品。切れる前に死んでいる
弦は金属です。張った瞬間から、空気に触れて酸化が始まります。そこへ手の汗や脂がつくので、劣化はさらに早まります。一般に、弦の寿命は2週間ほどとも言われます。
つまり、切れていなくても、音はとっくに落ちているということです。
僕自身も、最初の1年ほどは弦を替えたことがありませんでした。切れないから問題ないと思っていたのです。あるとき思い切って全部張り替えて、鳴らした瞬間に固まりました。別のギターかと思うほど、音が明るかったのです。
あのとき何より悔しかったのは、「自分の腕が悪いから、こんな音しか出ないのだ」と1年近く思い込んでいたことでした。
古い弦のまま練習するのは、曇ったメガネで景色を眺めるようなものです。
替え時を逃す3つの理由
理由①:切れていないから大丈夫だと思っている
いちばん多い勘違いです。弦は、切れることより先に音が死にます。
古い弦を使い続けると、音がこもってギター本来の響きが出なくなり、音の伸びも短くなります。さらに厄介なのが、音の高さを合わせる作業(チューニング)が決まらなくなること。合わせたつもりが、少し弾くとまたずれる。
初心者がこれに当たると、たいてい自分を疑います。「合わせ方が下手なのかな」と。違います。弦が伸びきっているだけです。
チューニングが安定しないのは、あなたの技術ではなく弦の寿命の問題です。
理由②:変化がゆっくりで気づけない
弦の劣化は、ある日突然ではありません。毎日少しずつ進みます。
そして毎日その音を聴いていると、耳が慣れます。昨日と今日の差はゼロに近いので、1か月かけて落ちた音を「こういう音のギターだ」と受け入れてしまう。
新しい弦に替えたときの驚きは、この慣れの裏返しです。落ちていたことに、戻して初めて気づきます。
僕の周りでも、久しぶりに弦を替えた人は、ほぼ全員が同じ反応をします。まず驚いて、次に「もっと早く替えればよかった」と言う。落ちていく音には気づけなくても、戻った音には誰でも気づきます。
理由③:交換が難しそうでこわい
これもよく聞きます。弦を張る作業は、慣れないうちは確かに面倒です。切れて飛んだら危ないのでは、と不安になる人もいます。
ただ、ここでお伝えしたいのは、自分でやらなくてもいいということです。この点は後ほど触れます。
もうひとつ、費用の心配もあるようです。ギターの弦は、6本まとめて数百円から千円台で買えます。月に一度替えても、コーヒー1杯分ほどの負担です。練習を支える道具としては、かなり安い部類だと思います。
替え方がわからないことは、替えない理由にはなりません。
替え時を見分ける3つのサイン
難しい判断は要りません。次の3つのどれかに当てはまったら替え時です。
サイン①:見た目が変わっている
弦をよく見てください。サビが出ていないか、変色していないか、光沢がなくなっていないか。 買ったときの銀色の輝きが、くすんだ灰色になっていたら替え時です。
サイン②:弦とフレットが当たる部分に注目
弦とフレットが当たる部分だけ色が違って見えることがあります。それが消耗しているサインです。
そういう違和感を感じたら、その弦はもう限界です。
サイン③:音がこもる、チューニングが合いにくい
耳と手で気づくサインです。弾いても音が伸びない。鳴らした瞬間から曇っている。合わせてもすぐずれる。
このどれかがあれば、腕を疑う前に弦を疑ってください。
交換の頻度と、やり方の要点
どのくらいの頻度で替えるか
弾く量によりますが、ざっくりした目安はこうです。
- ほぼ毎日弾く → 1か月に1回程度
- 週に数回 → 2〜3か月に1回程度
- ほとんど弾いていない → それでも半年に1回は替える
最後の項目が意外に思えるかもしれません。ですが、弦は弾かなくても酸化します。しばらく触っていなかったギターを久しぶりに弾くときは、まず弦を疑ってください。
1本だけ替えてはいけない
弦が切れたとき、その1本だけを替えたくなります。気持ちはわかりますが、これはおすすめしません。
新しい弦と古い弦では、音の明るさがまるで違います。1本だけ新品にすると、その弦だけが浮いて聞こえ、全体のバランスが崩れます。 面倒でも、6本まとめて替えてください。
自分でやらなくていい
交換に自信がないなら、楽器店に頼めます。弦代を含めても数百円から千円台程度で、その場で対応してもらえる店も多くあります。
替え方を覚えるまで替えないより、お金を払ってでも新しい弦で弾くほうが、確実に上達します。 数か月に一度なら、負担も知れています。
替えた直後は、音の高さがずれやすい
これを知らないと、初心者はまた不安になります。
新しい弦は、張ってから数日は伸びます。 弾いているうちに少しずつ緩み、音の高さがどんどん下がっていきます。「せっかく替えたのに、前より合わない」と感じるのは、ほぼこれが原因です。
不具合ではありません。落ち着くまで、こまめに合わせ直してください。3日ほどで安定します。
替えるついでに、太さを見直す
弦には太さの違いがあります。細いものほど、軽い力で押さえられます。
もし今、押さえるのがつらい、指が痛くて長く弾けないと感じているなら、交換のタイミングは、細い弦を試す絶好の機会です。 楽器店で「初心者なので、できるだけ柔らかいものを」と伝えれば選んでもらえます。
同じギター、同じ腕でも、弦を替えるだけで弾きやすさは変わります。
寿命を延ばす習慣
ひとつだけ、簡単で効果の大きい習慣があります。弾き終わったら、乾いた布で弦を拭く。 これだけです。
劣化の主な原因は、手の汗と脂です。それを毎回拭き取るだけで、持ちがはっきり変わります。10秒で終わります。
今日からできる3つのアクション
1. 今すぐ弦を見て、指でなぞる。くすみ、変色、どれか当てはまれば替え時です。
2. 前回替えた日を思い出す。思い出せないなら、それは替え時です。
3. 練習後に弦を拭く布(クロス)を、ギターのそばに置く。出しにくい場所に置くと、続きません。
替えた日を忘れないコツもひとつ。スマホのカレンダーに「弦交換済み」とだけ入れておいてください。次に迷ったとき、1秒で判断できます。
新しい弦の音は、初心者ほど感動します。上達を実感できない時期こそ、試してみてください。
弦を替えるだけで上手くなった気がする。この効果は、気のせいではありません。

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